『万博追跡』

台湾パビリオンのコンパニオンに抜擢された少女(ジュディ・オング)は、かつて母と自分を助けてくれた“名も知らぬ台湾の恩人”を探すため、広大な万博会場を駆け巡る。未来への熱気ときらめきに満ちた会場では、華麗な歌とダンスのミュージカル要素が物語を彩り、追跡劇は次第にサスペンスとアクションへ加速。少女は人波をかき分け、次々とパビリオンを巡りながら、記憶の糸をたどって“あの人”の正体に迫っていく。万博の高揚感そのものをフィルムに封じ込めた、スペクタクル・エンタテインメント。
台湾映画の保存・振興機関である国家電影及視聴文化中心(TFAI)の協力でデジタル修復され、本国公開から55年の歳月を経て、第21回大阪アジアン映画祭のオープニング作品として日本初上映された。『万博追跡』は単なる娯楽作にとどまらず、1970年大阪万博という“熱狂の現場”を実写で封じ込めた貴重な映像遺産である。太陽の塔をはじめ当時の会場やパビリオンの空気感が生々しく映り今では再現不可能な時代の息づかいを体感できるのが最大の魅力だ。また、万博会場のみならず、大阪、京都、奈良、北海道、果ては大戦末期の上海に至るまで壮大なスケールの物語が展開される。さらにミュージカルとアクション・サスペンスを融合させた追跡劇としての勢いもあり、歴史資料性とエンタメ性が同居している。当時を知る人、そして初めて出会う人にとってもなんとも心躍る映画が2Kレストア版にグレードアップし日本で公開する。
台湾、日本、アジアを席捲し、国際的スターとして絶大な人気を誇る歌手・俳優のジュディ・オングを主演に起用し、撮影当時20歳であった彼女の光り輝く存在感と歌唱が本作の魅力のひとつになっている。日本で台北駐日経済文化代表処の文化広報部長を務めた経歴を持つ『小翠』『ニセのお嬢さん』のリャオ・シャンションが監督を務め、美術の三上陸男、顧問の八木政雄(正夫)など、「ゴジラ」「ガメラ」シリーズなどを支えた日本特撮映画人たちも多数参加している。
1970年大阪万博のコンピニオンに選ばれた日本育ちの台湾人の雪子(ジュディ・オング)は、同級生の藤本哲男と一緒に大阪に向かうことに。
母は雪子にふたつの使命を授ける。台湾から生活費を送ってくれている謎の人物・陳春木を探すとともに、父親の死の真相をつきとめるというものだった。
手あたり次第、パビリオンで聞き込みをするのだが、ようやく陳春木を知っているという人を見つけ、陳春木の妹に会いに神戸に向かうことに。彼女は自分が台湾にいる兄に仕送りを依頼したが、それも別の誰かに頼まれた事だという。
しかしそれが誰なのかは口止めされていて語ろうとせず…。
2025年の大阪アジアン映画祭で2Kレストア版によりスクリーンに蘇った『万博追跡』が、いよいよ公開になる。太陽の塔を背にした55年前の人々が会場に集まるポスターは、当時を知る者にとってなんとも心躍るビジュアルだ。 昨年の関西万博は行かなかったが、EXPO'70には今でも想い出が色鮮やか残っている私は、本作の冒頭シーンですでに興奮が抑えられなかった。しかも、ジュディ・オング主演。白い羽を広げるようなドレス姿の「魅せられて」を歌うジュディではなく、ミニスカートで万博会場はもとより、京都や神戸、奈良、北海道を駆け巡るのだから。
映画の冒頭は、ダンサーたちの踊りをバックに"ジュディ・オン・ステージ"でたっぷりと歌を聞かせてくれ、わくわくがとまらない。ダンサーたちは当時のテレビ番組で踊る西野バレエ団の人気スター「レ・ガールズ」(金井克子、原田糸子、由美かおる、奈美悦子、江美早苗)を思い出す。ちゃんと5人いる。そして、管楽器を奏でるバンドマンをフィーチャーしているのも、あの頃の歌番組の雰囲気そのもの。台湾の製作チームは本当に日本のエンタメをよく理解し、再現率が高い。
そもそも日台の映画界は昔から関係が深く、2014年の大阪アジアン映画祭で「台湾語映画、そして日本」という小特集で上映された『温泉郷のギター(原題:温泉郷的吉他)』は、1960年代の日活アクション、小林旭の『ギターを抱いた渡り鳥』を台湾風にアレンジした作品であり、この他にも日活映画の味わいを取り込んだ台湾語映画がある。 さらに、日活が1960年代末期にニューアクションからロマンポルノへ移行したため、多くの中堅監督達が香港や台湾に活躍の場を移し、かつての日活アクション映画の香りを残す作品を撮っていた時代がある。1962年に製作・公開した日台合作の石原裕次郎主演「金門島にかける橋」(松尾昭典監督)も有名だ。このことについては語り出すとキリがないのでこの辺にしておくが、台湾語映画が多くの台湾人に愛されたものの、製作母体は零細企業が多かったため長続きせず、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)や楊德昌(エドワード・ヤン)らの台湾ニューシネマが台頭してくるというのが台湾映画界の変遷。
そして、ジュディ・オングが日本で芸能活動を始めた頃、日活映画に出演することが多かったのだ。1966年、小林旭主演の『黒い賭博師 悪魔の左手』の少年役から始まり、当時大ブームだったグループサウンズのザ・スパイダースが主演した『青春ア・ゴーゴー』、ヒット曲をモチーフにした『涙くんさよなら』ではジュディが主役。これらの明るく溌剌とした役柄とは異質の、『太陽の季節』に始まる湘南を舞台にした反逆的青春映画の系譜のひとつ『帰ってきた狼』では、ヒロインを演じた。この直後に台湾でも『小翠』に主演、同じ廖祥雄監督の本作から台湾映画への出演が続く。同時に日本では時代劇も含む様々なジャンルのドラマでも活躍し、1979年、前述の『魅せられて』で第21回日本レコード大賞受賞、第30回NHK紅白歌合戦にも初出場という快挙をとげていくジュディ。
大阪アジアン映画祭の暉峻創三プログラムディレクターは、本作の修復から上映までの経緯において、「台湾の人たちのやる気と努力、ジュディ・オングさんの献身的な協力があってこそ実現できた」と語っている。 1970年の大阪万博では、開催を記念して大阪城本丸跡の地下に5000年後に向けて2つのタイムカプセルを埋めた。しかし55年後の今、芸能活動だけではなく、広く日台の文化に貢献してきたジュディはじめ多くの映画人の力でこの『万博追跡』というタイムカプセルが開封された。 さぁ、1960年後期の社会、文化、ファッション等々、この映画を通じて存分に楽しませてもらおう。
ジュディ・オング
歌手・女優・木版画家
台湾生まれ。3歳で来日し、9歳で劇団ひまわり入団。女優として11歳の時、日米合作映画「大津波」でデビュー。その後も、国内外のテレビドラマ、映画、舞台に多数出演。歌手デビューは16歳、以来数々のヒットを飛ばし、1979年には「魅せられて」が200万枚の大ヒット、日本レコード大賞を受賞。木版画家としては、14回の日展入選を果たし、2005年には日展特選を受賞、国内外で個展を開催している。90年代よりアジアの子供たちの為の「北京平和音楽祭」を初め、チャリティイベント「台湾大地震ハート・エイド」「ハートエイド四川」をプロデュース。2025年年末に台湾にて公開された映画「陽光女子合唱団」は興行収入5億4500万新台湾ドル(約26億6000万円)を突破し、台湾映画として台湾の興行収入史上最高額を記録した。
製作:龔弘
Produced by Henry KUNG
監督:廖祥雄
Directed by Hsiang-hsiong LIAO
原案:甘泉
Story by KAN Chuan
脚本:陳雪懷 甘泉
Written by CHEN Hsueh-huai, KAN Chuan
アシスタント・プロデューサー:喩可象 段凌
Assistant Producer YU Ko-hsiang, DUEN Ling
顧問:蔡東華 八木政雄
Consultant TSAI Tung-hua, YAGI Masao
攝影:林鴻鐘
Director of Photography LIN Hung-chung
アートディレクター:羅慧明
Art Director LUO Hui-ming
編集:沈業康、宮崎善行
Editors SHEN Yeh-kang, MIYAZAKI Zenkou
音樂:李林
Music by LI Lin
美術:三上陸男 張季平
Production Designers KIMIKI Mutsuo,CHANG Chi-ping
メイク:久保久子
Makeup Artist KUBO Hisako
主演:翁倩玉 馮海
Starring Judy ONGG, FENG Hai
共演:魏蘇 傅碧輝 陳國鈞 喬松 張莉 曾玉 原田玄 川名美彌 衫森麟 小山八千代
WEI Su, FU Pi-hui, CHEN Kuo-chun, CHIAO Sung, CHANG Li, TSENG Yu, HARADA Gen,KAWANA Miya, SUGIMORI Rin, OYAMA Yachiyo
特邀出演:林海峯
Special Guest RIN Kaiho
カメオ出演:周祥賡 莊文華
Cameos CHOU Hsiang-keng, CHUANG Wen-hua