家族を失った孤独と悲しみを抱え16歳で出会ったKとクリーム。身寄りがなく、長いあいだ一緒に暮らす二人は親友にして唯一の家族。でも、決して恋人ではない。どんなに愛していてもKはクリームの恋人になるわけにはいかない。白血病を患う自分がクリームを幸せにすることはできないと考えていたからだ。自分の余命が僅かだと知ったKは、クリームが再び孤独と悲しみを味わうことがないよう密かに“準備”を始める。それは、自分の代わりに彼女を幸せにできる男性に彼女を託すことだった……。
2009年に大ヒットしたクォン・サンウ主演の韓国映画『悲しみよりもっと悲しい物語』を、台湾の新世代監督であるギャビン・リンがリメイク。オリジナル版の登場人物を新たに脚色し、台湾らしいみずみずしい描写で悲恋の物語を軽やかに綴っている。
2018年10月、韓国の第23回釜山国際映画祭 オープンシネマ部門でワールドプレミアとして上映された本作は、チケットが発売開始から5分で売り切れるほどの高い人気を見せ、当日は5000人の観客がその感動のラブストーリーに涙を流した。翌月末に台湾で劇場公開されると初日から観客が詰めかけ、公開わずか9日でヒットの指標といわれる興行収入1億元(約4億円)を突破。多くの観客の支持を得て、年末公開ながらもその年の国内映画興行収入ランキングで堂々の第1位にランクインし、空前のメガヒットとなった。翌年3月には中国で台湾映画として史上初めて興行収入第1位を記録する快挙を達成。さらに、シンガポールとマレーシアでも2018年アジア映画興行収入第1位を記録しセンセーションを巻き起こした。日本でも第14回大阪アジアン映画祭で初上映され高い評価を受けた。
余命僅かの音楽プロデューサーKを演じるのは、TVドラマ「恋する、おひとり様」や映画『私を月に連れてって』などに主演し、その明るく温かみを感じさせる個性で“ぽかぽか男子”、“最も萌える彼氏”と呼ばれる人気俳優リウ・イーハオ。これまでラブコメを演じることの多かった彼にとってシリアスなテーマである本作は新たな挑戦となったが、見事に一皮向けた演技を披露し役者としての評価を高めている。Kへの複雑な恋心に揺れるクリームを演じるのは、『軍中楽園』で第51回金馬奨最優秀助演女優賞にノミネートされたアイビー・チェン。可愛らしい表情の中に様々な感情を秘めたクリームという女性をナチュラルに表現し、巧みな演技でラストシーンまで目の離せない熱演を見せる。さらに、台湾を代表する歌姫A-Linが本人役で映画初出演を果たしている。
そのA-Linが切なくも力強く歌いあげて大ヒットした主題歌『ある悲しみ』は第56回金馬奨最優秀オリジナル映画歌曲賞に見事ノミネートされた。