閃光のごとき衝撃と陶酔
ウォン・カーウァイ監督初期の傑作が13年ぶりにスクリーンに甦る
後に『恋する惑星』、『ブエノスアイレス』などで知られるウォン・カーウァイ監督が、第2作目にして各国の映画祭でセンセーションを巻き起こし、世界的な注目を浴びるきっかけとなった本作。それまでの香港映画と一線を画す、浮遊感と疾走感の入り混じる語り口と映像美。当時「香港映画史上最初で最後」と言われたほどに豪華な、6人のトップスターを起用したキャスティング。そして時制/数字へのこだわりや印象的な音楽──『欲望の翼』はウォン・カーウァイ監督独特のスタイルが確立された原点と言え、実際に本作のモチーフは名作『花様年華』、そして『2046』へと引き継がれた。
クエンティン・タランティーノや、昨年のオスカーに輝いた『ムーンライト』のバリー・ジェンキンスといった監督も影響を公言し、2015年にNY・メトロポリタン美術館で行われた「鏡の中の中国」展の芸術監督も任されるなど、ジャンルや国境をも超えて今なお熱烈に支持されるウォン・カーウァイ監督。その色褪せることない傑作群の中でも『欲望の翼』は2005年以降日本での上映権が消失しており、スクリーンでの上映は実に13年ぶり。「あの時にしか生まれ得なかった」奇跡の傑作が、制作から28年の時を経て新たな疾走を始める。