INTRODUCTION
低予算ながら全米で大ヒットを記録し、日本でもコアなファンの多い『ナポレオン・ダイナマイト』(04)を彷彿とさせるシュールなキャラクター描写に、“普通”や“世間”に抗う若者たちの輝きを加えた『ディナー・イン・アメリカ』は、「今の自分を形作った 90 年代のパンクシーンに捧げるラブレター」と監督が語る通り、恋愛映画でありながら、映画そのものがマジョリティーに立ち向かうユーモアとパンク精神に彩られた、アメリカのインディーズ映画界から久々に現れた渾身の一作である。

プロデュースを務めたのは俳優としては勿論のこと『ズーランダー』『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』『LIFE!』などプロデューサーとしても大活躍のベン・スティラー。監督は 40 以上の映画祭で上映され、その過激な内容で物議を醸した『バニーゲーム』(10)のアダム・レーマイヤー。撮影は日本でも大ヒットした『サマー・オブ・84』(18)でも撮影を担当したジャン=フィリップ・ベルニエ。音楽は『ナポレオン・ダイナマイト』(04)のジョン・スウィハートが担当した。

主演のエミリー・スケッグスは舞台俳優としてキャリアを開始。日本でも舞台化され話題となったミュージカル「ファン・ホーム」で、2015 年のトニー賞ミュージカル助演女優賞と最優秀ミュージカル・シアター・アルバム賞にノミネート、同作でシアターワールド賞を受賞。
2018 年のサンダンス映画祭でグランプリを獲得した『ミスエデュケーション』(18)ではクロエ・グレース・モレッツと共演。ほかに 『マイル 22』(18)などの映画作品にも出演するが、本作が長編映画での初主演作となる。

もう一人の主演、カイル・ガルナーは『CSI:ニューヨーク』(06~13)、WOWOW オンデマンドで配信中の『インテロゲーション:尋問~殺意の真相~』(20)など 2000 年代初頭からドラマを始め活躍。映画では『エルム街の悪夢』(10)でルーニー・マーラと共演、『アメリカン・スナイパー』(14)ではブラッドリー・クーパー演じる主人公の同僚の兵士を演じ、ほかに『ザ・ブリザード』(16)、『ビューティフル・ボーイ』(18)など出演作多数。 さらに映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85~90)シリーズのリー・トンプソン、日本でもおなじみ「24 -TWENTY FOUR-」シリーズ(01~14)でクロエ役を演じたメアリー・リン・ライスカブなどが脇を固める。

本作は 2020 年のサンダンス映画祭オフィシャルセレクションでの上映を始め、ダブリン国際映画祭(ダブリン批評家スペシャル審査員賞・受賞)、ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭(観客賞・受賞)、オデッサ国際映画祭(グランプリ受賞)など多数の賞を受賞しているにも関わらず、昨今の新型コロナの影響でいまだ本国アメリカでは公開されておらず、先立っての日本公開となる。
STORY
孤独な少女が家に匿ったのは、覆面バンドの推しメンだった…!?
孤独な少女が家に匿ったのは、覆面バンドの推しメンだった…!?
パティは孤独で臆病な少女。過保護に育てられ、したいこともできず、単調な毎日を送っている。唯一、平凡な人生から逃避できる瞬間、それはパンクロックを聴くこと。そんな彼女が、ひょんなことから警察に追われる不審な男・サイモンを家に匿ったものの、実はその男こそが彼女の愛するパンクバンド“サイオプス”の心の恋人、覆面リーダーのジョン Q だった…。
家族や周囲から変人扱い、社会不適合者、厄介者と蔑まれる、出逢うはずのない二人が、心惹かれ合い社会の偏見をぶっ飛ばしてゆく究極のアナーキック・ラブストーリーが誕生した!
CAST
エミリー・スケッグスパティ役
EMILY SKEGGSas Patty
ニューヨーク州ニューヨーク市生まれ。ラガーディア高校卒業後、エマーソン大学で演劇を専攻。大学在学中から数々の演劇に出演し、卒業後ブロードウェイでキャリアを積む。日本でも舞台化され話題となったミュージカル「ファン・ホーム」で主人公アリソンの学生時代役を演じ、2015 年のトニー賞ミュージカル助演女優賞と最優秀ミュージカル・シアター・アルバム賞にノミネート、同作でシアターワールド賞を受賞(メリル・ストリープやジョン・マルコビッチ、ジュード・ロウなども過去に受賞)。米 ABC で同性愛者の社会運動をテーマにガス・ヴァン・サントが製作総指揮を担当し、『ミルク』(08)でアカデミー賞脚本賞を受賞したダスティン・ランス・ブラック監督のTV シリーズ「When We Rise」に出演。2018 年のサンダンス映画祭でグランプリを獲得した『ミスエデュケーション』(18)ではクロエ・グレース・モレッツと共演。ほかに 『マイル 22』(18)などの映画作品にも出演するが、本作が長編映画での初主演作となる。
カイル・ガルナーサイモン役
KYLE GALLNERas Simon
ペンシルベニア州フィラデルフィア出身。2000 年代初頭からドラマを始め活躍。TV シリーズに「CSI:ニューヨーク」シリーズ(06~13)、WOWOW オンデマンドで配信中の「インテロゲーション:尋問~殺意の真相~」(20)などがある。アメリカでカルト的な人気を博した大ヒットコメディ『ウェット・ホット・アメリカン・サマー』(01)で映画に初出演。『エルム街の悪夢』(10)でルーニー・マーラと共演、『アメリカン・スナイパー』(14)ではブラッドリー・クーパー演じる主人公の同僚兵士を演じた。ほか出演作に『ザ・ブリザード』(16)、『ビューティフル・ボーイ』(18)、『ヘル・フィールド ナチスの戦城』(20)など多数。
グリフィン・グラックケビン役
GRIFFIN GLUCKas Kevin
カリフォルニア州ロサンゼルス出身。子役からスタートし、役者としてすでに 10 年以上のキャリアを持つ。米 NBC の TV コメディ「ジ・オフィス」シリーズ(05~13)に出演。NETFILX で配信中のドラマ「アメリカを荒らす者たち」(17~18)や「ロック&キー」(20)にも出演している。映画では同名の小説から映画化された『史上最悪の学園生活』(15)や『トールガール』(19)に出演しておりどちらも NETFLIX にて配信中である。
パット・ヒーリーノーマン役
PAT HEALYas Norman
イリノイ州シカゴ出身。人気シリーズ『ホーム・アローン 3』(97)で映画デビューを果たして以来、様々な TV ドラマや映画へ出演。2004 年にアメリカで実際に起ったストリップサーチいたずら電話詐欺を元にした『コンプライアンス 服従の心理』(12)では重要な役どころを演じ、2013 年のSXSW で観客賞を受賞したブラックコメディ映画『ザ・スリル』(13)では主役を演じた。ほか出演作に『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(17)、『バッド・エデュケーション』(19)など多数。俳優以外ではトライベッ カ映画祭で上映された『TAKE ME』(17)を監督。また HBO の TV ドラマ「In Treatment」シリーズ(08~21)では 3 エピソードで脚本家としても参加しており、多様な才能を発揮する。
メアリー・リン・ライスカブコニー役
MARY LYNN RAJSKUBas Connie
ミシガン州トレントン出身。日本でも大ヒットした TV ドラマ「24 -TWENTY FOUR-」シリーズ(01~14)のクロエ・オブライエン役で一躍有名になり、同作で演技面も評価を受け全米映画俳優組合賞アンサンブル・キャスト賞(ドラマシリーズ部門)に 2 度ノミネートを果たす。スタンダップ・コメディエンヌとしても活躍しており、フレッド・アーミセンと"Girls Guitar Club" という名のコンビを組んで活動している。ほか出演作は『パンチドランク・ラブ』(02)、『リトル・ミス・サンシャイン』(06)、『ジュリー &ジュリア』(09)、『サンシャイン・クリーニング』(08)、『キングス・オブ・サマー』(13)、『フェリーニに恋して』(17)、『トゥモロー・ウォー』(21)など。
ハンナ・マークスベス役
HANNAH MARKSas Beth
カリフォルニア州サンタモニカ出身。2005 年より俳優として活動をはじめ、『トラブル・カレッジ/大学を作ろう』(06)で映画デビュー。同作とTV ドラマ「フラッシュ・フォーワード」(09)でヤングアーティスト賞を 2 度受賞。主演を務めたコメディー映画『Banana Split』(18)では脚本も担当し、その後『After Everything』(18)では監督と脚本を手掛けた。2016 年の SXSW では「これからブレイクするであろう有望な 7 人のアーティスト」に選出、翌2017年はローリングストーン誌「世界を変える 25歳以下のアーティスト 25 人」の 1 人に、そして 2020 年にはフォーブス誌「30 歳以下の注目の芸術家 30 人」の 1 人に選出された。映画『ダニエル』(20)ではマイルズ・ロビンス、パトリック・シュワルツェネッガーと共演し話題となった。
リー・トンプソンベティ役
Lea Thompsonas Betty
ミネソタ州ロチェスター出身。『ジョーズ 3』(83)で映画デビューを果たす。その後、日本でも大ヒットとなった『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ(85~90)で主人公の母親ロレイン・マクフライ役を演じ一躍有名に。日本でも一時アイドル的な人気を博し雑誌の表紙や CM などにも出演した。90 年代以降は「キャロライン in N.Y.」(95~99)、「スイッチ 〜運命のいたずら〜」(11~17)など TV ドラマに多数出演しながら、並行して00 年代以降は TV ドラマの監督も多く務める。近年の映画出演作に『パ ーフェクト・プラン 完全なる犯罪計画』(11)、『J・エドガー』(12)、『レフト・ビハインド』(14)、『若草物語』(18)などがある。
STAFF
監督・脚本・編集
アダム・レーマイヤー
ADAM CARTER REHMEIER
撮影監督、編集、ドキュメンタリーカメラマンとして 10 年間ハリウッドで下積み時代を経て、衝撃的なデビュー作『バニーゲーム』(10)で監督・脚本デビューを果たした。過激な内容で物議を醸し、PollyGrind 映画祭で撮影賞、編集賞などを受賞し、40 以上の映画祭で上映され話題となった。現在デイヴィッド・ランカスターのランブル・フィルムズと共に「HEARTLAND」というミニシリーズを企画しており、それ以外にも「Elegy for an American Dream」というドキュメンタリーに取り掛かっている。
プロデューサー
ベン・スティラー
BEN STILLER
俳優・映画監督・脚本家・プロデューサーとして活躍している、ハリウッドで最も成功しているマルチなタレントの持ち主。ウィノナ・ライダーとイーサン・ホークと共に自身も出演した『リアリティー・バイツ』(94)で監督デビュー。その後、数々のヒット作に出演しながらジム・キャリー主演の『ケーブル・ガイ』(96)、自身が主演の『ズーランダー』(01)、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(08)、『LIFE!』(13)といった幅広いジャンルの作品を監督した。最新監督作ではアメリカの TV 局 Showtime で放映されたパトリシア・アークエット、ベニチオ・デル・トロなどが出演したミニシリーズ「エスケープ・アット・ダンネモラ〜脱獄〜」(18)を手掛け大ヒットとなった。
撮影
ジャン=フィリップ・ベルニエ
JEAN-PHILIPPE BERNIER
モントリオールで活躍する撮影監督であり作曲家。2015 年のサンダンス映画祭と SXSW で上映されたカルト的映画『ターボキッド』(15)は 20 以上の映画祭で上映され数々の賞を受賞し一躍有名となった。その後、『サマー・オブ・84』(18)はサンダンス映画祭でプレミア上映され、日本でもヒットを記録した。
音楽
ジョン・スウィハート
JOHN SWIHART
インディアナ州のブルーミントン出身。独特のスタイルと、ユニークなサウンド、意外な楽器の選曲で知られる映画、テレビ界で活躍する作曲家。幼少期を学者である父と共にヨーロッパやアジアで過ごした。子供の頃からピアノを習い、8 歳の時に初めてサクソフォンと出会ったことで本格的に音楽を始め、12 歳の頃にギターに出会い夢中となった。その後バークレーで音楽を学び、ラスベガスで行われたミュージカル「ブルーマン」にも携わった。映画『ナポレオン・ダイナマイト』(04)の音楽を担当したことから一躍その名を有名なものとした。その後もナタリー・ポートマン主演の『水曜日のエミリア』(09)、アントン・イェルチン主演の『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』(13)などの音楽も担当している。これまで 70 本以上の映画、50 本以上の TV 番組の音楽に携わった。
CREDIT
監督・脚本・編集:アダム・レーマイヤー
プロデューサー:ベン・スティラー、ニッキー・ウェインストック、ロス・プットマン
エグゼクティブプロデューサー:ステファン・ブラウム、ショーン・オグレー
音楽:ジョン・スウィハート
撮影:ジャン=フィリップ・ベルニエ
出演:カイル・ガルナー、エミリー・スケッグス、グリフィン・グラック
パット・ヒーリー、メアリー・リン・ライスカブ、リー・トンプソン

配給:ハーク 配給協力:EACH TIME

2020年/アメリカ/英語/106分/カラー/5.1ch/シネマスコープ
原題:Dinner in America/字幕翻訳:本庄由香里
COMMENTS
俺の知ってるパンクス達の日常なんてこの映画みたいなもんだ。友人が出ていないかと探すくらいに、リアルなパンクスの生活がそこら中に垣間見える。監督が本当のパンクシーンを知っているとしか思えない。パンクミュージシャンとパンクスは絶対的に違う。そんな当たり前さえわからないなら、この映画を観るといいだろう。
ISHIYA
FORWARD / DEATH SIDE
これは伝染るアナーキストのパンク愛!
Stick to your guns!(自分を貫け!)
Don't be a poser!!(“まがい物”になるな!!)
STAY PUNK!!!
氏家譲寿 a.k.a."ナマニク"
映画評論家
全編を貫く奇妙な悪酔い感のせいだろうか?最初は「こんなアホなヤツいるかよ」と思っていても、最後にはすっかり主人公を好きになってしまう。90年代インディーズ映画へのノスタルジーではなく、その最良のスピリットがここに。
宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト
「お前はバカじゃない、パンクロッカーなんだ!」そんな事言ってる時点でもうバカなんだけどさ。でもいいね、グッと来た、ちょっと勇気が出る。
大槻ケンヂ
ロックミュージシャン
パンクでコミカルでスイートなアナザー・ラブ・ストーリー!突き抜けるまでやっちゃえパティちゃーーん! OOPS!!
大貫憲章
音楽評論家
パンク×愛でつながった二人は最強!まっすぐでエネルギッシュなラブ・ストーリーに元気がでました!パティの視点からみると、今の時代誰もが夢見るような"成功したオタク"っぷりに興奮を覚え、さらにはパティとサイモンの関係が単純なラブ・ストーリーの枠にとどまらないのが魅力的でした。生きづらい世の中へのアンチテーゼを示すように生きる二人のパンクな生き方がかっこよすぎる…!
尾辻彩花
HMV&BOOKS SHIBUYA 映像担当
パンクな2人の共同制作。ボクもこういう爆発を毎回したい。
菅谷晋一
デザイナー
ありふれた生活のとなりにある、ちょっとおかしな生活。部屋の中で一人で狂喜するパンクってそんな感じだ。『ディナー・イン・アメリカ』は、アナログ感覚な90年代を愛情たっぷりにうまく表している。ロック・ファンには、ディヴィッド・ヨウ(Jesus Lizard)が出ているのも嬉しいところ。
TAYLOW
the原爆オナニーズ
すべてがパンクでロマンティックで愛おしい!家族にも社会にも吐き捨てられた二人の人生が爆音のパンクロックのように疾走する。自分を解放しろ!自己を表現しろ!と大声で呼びかけてくる。はみ出し者たちにも明日はある!
ビニールタッキー
映画宣伝ウォッチャー
ロック・ファンには音楽を通じて妄想を抱く自由がある。その妄想を常備薬にしながらやり過ごす退屈な日常に、顔も知らない推しメンが突如紛れ込んできた途端、取り繕われた家族の食卓に異変が起き、主人公の現実が変わっていく。実話じゃないのに妙にリアルで、いつのまにか劇中バンドであるサイオプスの行く末が気になってくる。理屈抜きに楽しい!
増田勇一
音楽ライター
こう言うことなんだよ、うまく生きるのが下手くそな者たちへの讃歌として<映画>は在ったんだよ!そして威切ったその姿はやっぱりダサくて、哀しくて、ものすごく愛おしいんだよ。キラキラした奴らに泣きっ面で唾を吐け!
三堀大介
デザイナー
この涙は感動からでは決してない。違う。この溢れる涙は…きっと過去の私(僕)からの涙なのだろう。キラキラしたYouth世代の為の映画というより、寧ろ、それを通過した世代に向けた映画なのだろう。まだまだ妄想し続けなければならない…。思春期は永遠だ…。
ミヤシタタカヒロ
TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.
パンク・ロックとはどういう音楽なのか。なぜパンク・ロックが好きになるのか。「好き」ってどういうことなのか。いろんな答えがこの映画に詰まっている。
村尾泰郎
映画/音楽ライター
この秋一番の強炭酸の恋!偏見や世間体を弾け飛ばす二人の一挙手一投足に心がキュン死すること間違いなし!
yzw
パブリシスト
最低の田舎町、最低の生活、最低の食卓。どう考えてもロマンティックになりようにない話が最高のラブストーリーに転化していく。まるで小さな奇跡を目にするようでした。
山崎まどか
コラムニスト