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2019年ヴェネチア国際映画祭内のヴェニス・デイズ部門でプレミア上映された本作は、その後トロント国際映画祭ほか世界中の映画祭で上映され数多くの賞を獲得した。またポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』やペドロ・アルモドバル監督『ペイン・アンド・グローリー』と肩を並べて第92回アカデミー賞®国際長編映画賞に見事ノミネートされた。ポーランド代表作品がノミネートされたのは前年の『COLD WAR あの歌、2つの心』(18)に続き2年連続の快挙である。2020年3月2日ワルシャワで行われたポーランドのアカデミー賞とされる2020 ORL Eagle Awardsでは監督賞、作品賞、脚本賞、編集賞、撮影賞ほか11部門を受賞した。
監督は本作が3作目となるポーランド出身のヤン・コマサ。長編デビュー作「Suicide Room」(11)は第61回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に正式出品され、長編2作目となる『リベリオン ワルシャワ大攻防戦』(14)は本国ポーランドで180万人を動員する大ヒットとなった。最新作『ヘイター』(20/Netflixで配信中)ではトライベッカ映画祭のインターナショナル・ナラティブ部門で最優秀作品賞を受賞し、米HBOがTVシリーズ化することも決定した。主演は、弱冠28歳のバルトシュ・ビィエレニア。一度見ると忘れることのできない強い眼差しから放たれる、天使と悪魔の両面性をもった人物の危うさ、畏れ、悲しみ、怒り、諦めなど観る者を不安にさせるほど予測不可能なリアクションで見事に演じた。今ポーランド映画界を牽引する気鋭監督と若手俳優による渾身の衝撃作がいよいよ日本上陸となる。
少年院で出会った神父の影響で熱心なキリスト教徒となった20歳の青年ダニエルは、前科者は聖職者になれないと知りながらも、神父になることを夢見ている。仮釈放が決まり、ダニエルは少年院から遠く離れた田舎の製材所に就職することになった。製材所への道中、偶然立ち寄った教会で出会った少女マルタに「司祭だ」と冗談を言うが、新任の司祭と勘違いされそのまま司祭の代わりを任された。司祭らしからぬ言動や行動をするダニエルに村人たちは戸惑うが、若者たちとも交流し親しみやすい司祭として人々の信頼を得ていく。一年前、この村で7人もの命を奪った凄惨な事故があったことを知ったダニエルは、この事故が村人たちに与えた深い傷を知る。残された家族を癒してあげたいと模索するダニエルの元に、同じ少年院にいた男が現れ事態は思わぬ方向へと転がりだす…。
1992年生まれ。2016年クラコフにある国立アカデミー・オブ・シアター・アーツを卒業。7歳の時、舞台「星の王子様」で主役としてデビューする。2014年から2017年まで国立スタリー劇場に所属し、「エドワードⅡ世」「リア王」「ハムレット」などの舞台に出演した。映画ではカソリック教会のスキャンダルを描き話題となったヴォイテク・スマジェフスキ監督作「Clegry」、ボド・コックス監督作「The Man with the Magic Box 」、パヴェウ・ボロフスキ監督作「I am Lying Now」などに出演。また最近ではアニエスカ・ホランドとカシャ・アダミク監督のTVシリーズ「1983」(Netflix)に出演している。
1992年生まれ。ワルシャワのアレクサンデル・ゼルヴェロヴィッチ・ナショナル・アカデミーを卒業。アンナ・カゼヤク監督の「The Promise」で映画デビューを果たす。ヤツェク・ルシンスキ監督作「Carte Blanche」、アン・フォンテーヌ監督作「Innocent」などに出演している。2014年に出演した「Innocent」ではヴィエンナ・インターナショナル・フィルム・フェスティバルで最優秀女優賞を受賞。2016年にはポーランドのラジオ第3チャンネルが毎年発表する活躍した若者に与える賞であるタレンティー・トゥルイキの映画部門にて受賞者の一人として選ばれた。
1965年生まれ。長年ヨーロッパの演劇界で活躍しながら、舞台監督としても数々の演劇を演出してきた。2016年にはヤン・P・マトゥシンスキ監督作「The Last Family」で有名なポーランド人画家ズジスワフ・ベクシンスキーの妻ゾフィア・ベクシンスカを、2018年にはヤヌシュ・コンドラトィウク監督作「A Cat and a Dog」でイガ・ツェムブジンスカを演じ、両方の作品がグディニャ・ポーランド映画祭で受賞を果たし高く評価された。また2017年のポーランドアカデミー賞にて名誉賞を受賞した。
1989年生まれ。ポーランドの若手俳優の中でも今最も注目されている役者の一人とされている。アントニ・クラウゼ監督作「ヤネク・ヴィシニエフスキ・パダウ<暗い木曜日- 落ちるヤネク・ヴィシニエフスキ>」、ロベルト・グリンスキ監督作「Stones for the Rampart」で有名になり、2018年にはピョートル・デマレフスキ監督作「Silent Night」で、ポーリッシュ・フィルム・アワードの最優秀助演賞を受賞した。最新の出演作にはフィリップ・バイオン監督作「The Butler」、BBCのTVシリーズ「World on Fire」などに出演している。



1981年生まれ。舞台俳優の父とゴスペルシンガーの母との間で生まれる。初監督した短編映画「Fajnie, ze jestes」英題「Good, You’re Here」(04)が第57回カンヌ国際映画祭シネファンデーション・コンペティション部門で高く評価された。長編デビュー作「Suicide Room」(11)はポーランドの新世代が直面するインターネット中毒を生々しく描き、第61回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に正式出品された。長編2作目となる『リベリオン ワルシャワ大攻防戦』は本国ポーランドで180万人を動員する大ヒットを記録。Netflixで配信中の最新作『ヘイター』では本作の脚本家マテウシュ・パツェヴィチと再度タッグを組み、トライベッカ映画祭のインターナショナル・ナラティブ部門で最優秀作品賞を受賞。また米HBOでのTVシリーズ化が決定している。監督だけでなく、脚本、プロデュースと多岐に渡って活躍し、ポーランドのみならず世界で注目される若手監督の一人である。
監督:
ヤン・コマサ
脚本:
マテウシュ・パツェヴィチ
撮影:
ピョートル・ソボチンスキ Jr
編集:
プシェミスワフ・フルシチェレフスキ
プロダクション・デザイン:
マレク・ザヴィエルハ
衣装:
ドロタ・ロクピュル
サウンド・デザイン:
カツペル・ハビシャク
マルチン・カシンスキ
トマシュ・ヴィチョレク
音楽:
ガルぺリン・ブラザーズ
ダニエル:
バルトシュ・ビィエレニア
マルタ:
エリーザ・リチェムブル
リディア:
アレクサンドラ・コニェチュナ
ピンチェル:
トマシュ・ジィェンテク
バルケビッチ:
レシェク・リホタ
トマシュ:
ルカース・シムラット
2019年‖ポーランド=フランス合作‖ポーランド語
115分‖5.1chデジタル‖スコープサイズ
原題:Boże Ciało‖英題:Corpus Christi
字幕翻訳:小山美穂‖字幕監修:水谷江里
後援:ポーランド広報文化センター
信じることと疑うことは、とても近くにあるのかもしれない。
だとしたら、それはとても怖いことだ。
武田砂鉄
ライター
人は自らの犯した罪から逃れるために“秘密”という道具を使う。加害と被害のどちらにも寄らない作り手の“神の視線”は静かなサスペンスを生んだ。作劇の勝利だ。
向井康介
脚本家
善人か悪人か。その評価は現象でしか判断できない。その絶妙な感性の綱渡りを体感できる実話に基づく物語。
松尾 貴史
俳優
ダニエルの眼差し。様々な場面で強烈な印象を残すこの眼差しに宿るもの。時に濁り、時に透き通るその眼にこそ”聖なる”一瞬が訪れるのでは?それを捉えようとして作られた作品なのではないか?だからこそ、僕らはこの作品から目を逸せない。
ダースレイダー
ラッパー
光と闇の中で彷徨う私達人間の心の葛藤がリアルに表現されていて、
この映画を見た全ての人に真実に生きることの大切さを知らせてくれるだろう。
鈴木啓之
シロアムキリスト教会牧師
もしも「神」というものが存在するのであれば、誰もが意図することなく、何人も気づかず、ふいに去っていくものではないか。無邪気な表情をした一陣の風が吹いた、とでもいえばいいのか。不思議な虚しさが残存する。そんな感覚をぼくに植えつけたのがこの映画だ。
藤井誠二
ノンフィクションライター
善人であろうとする者が犠牲になってしまう不寛容。
これは遠い国で起きている問題ではなく、私たちがいま生きるこの国の問題でもある。
それをバルトシュ・ビィエレニアの鋭い眼光は、スクリーンを突き破って訴えかけてくる。
児玉美月
映画執筆家
ヤン・コマサは憎悪が染み付いた現代の病理を炙り出す。本作と次作『ヘイター』は、宗教と政治が同じ名の詐欺師によって対称的に操作される警告の寓話である。鋭い眼光の“悪党”が善悪が二極化した社会を撹乱させる。
常川拓也
映画ライター
彼はどこで、間違えたのか?
前科者は神父になれない。揺るがない現実を前に、少年は再び、道を踏み外す。
その先にあるのは、ご都合主義的な福音じゃない。物語は彼を決して許さない。
神は見ているのだ。お前の「本質」を。
SYO
映画ライター
敬称略・順不同